大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート
2019年11月に公表された単純集計結果の報告書をもとに、特に重要なものをこのウェブサイト用に抜粋し簡潔に紹介しています。設問を、回答者の基本状況、心身の健康、性のあり方(SOGI)、経験、性についての考えの5つに分類して提示しています。
アンケートへの回答者の方々の年齢や居住区、就業状況などを紹介しています。
回答者の飲酒や喫煙など健康にかかわる習慣や、最近1ヶ月間の心の状態、精神的健康状態についての結果を紹介しています。
出生時の「性別」だけなく、性自認(現在自認している性別が出生時の性別と一致しているか)や、性的指向(同性愛、両性愛、異性愛など)を多角的な設問でたずねています。
回答者が不快な冗談・からかい、暴力的行為を受けたり、見聞きしたりした経験の有無について、学校に通っていた時代と、大人になってからに分けてたずねています。
男どうし・女どうし、男女の恋愛感情や性のあり方についての回答者の考えや、大阪市における、性的マイノリティにかかわる取り組みについての意見について紹介しています。
このウェブサイトは、2019年1月~2月にかけておこなった『大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生についてのアンケート』(大阪市民調査)の集計結果をまとめた報告書および、その結果を一部抜き出して要約したウェブ版を公開したページです。ウェブに直接掲載されている結果(ウェブ版)は、報告書版と完全に同じデータを使いながら、ふだん報告書になじみがない人にもわかりやすく結果を伝えるため、視覚的に見やすく工夫し、内容をもっとも重要なものに絞りました。
本アンケートでは、大きく分けて、仕事のこと、健康・生活習慣、対人関係、回答者・家族のこと、経済的状況、男女の役割・家族・性のあり方についての考え方、回答者の性や恋愛にかかわること、性の多様性にかんする取り組みについての考え方をたずねました。本調査のねらいは、性的指向と性自認のあり方を、いわゆる一般向けの無作為抽出による調査に含め、性自認と性的指向による生活実態の比較が可能な調査のあり方を、検討することにありました。これまでの当事者向けの調査や、事例研究を通じて、日本における性的マイノリティの状況が明らかになりつつあります。しかし、性的マイノリティとそれ以外の人びとの生活実態を直接比較した研究、とくに統計的にちがいがあるかを検証できるような研究はまだなされていないため、比較可能な形でのデータも整備していくことが重要だと考えました。
周知のとおり、人びとの性的指向と性自認のあり方を調査することは、年齢を調べるように簡単にできません。「LGBT」がメディア等でひんぱんに取り上げられるようになる前から、学問の世界では、性的指向(どの性に恋愛感情や性的魅力を感じるか)や性自認(自分をどの性別だと感じるか)にかかわる研究が積み重ねられてきました。ただし、研究がどれくらいおこなわれているかは、分野によって大きな違いがあり、特に日本でおこなわれている社会人口学の研究では、性的指向や性自認を取り上げることはありませんでした。
そのため少なくとも日本においては、性的指向と性自認のあり方を適切に把握するための調査項目は、まだ確立されていません。そこで、社会人口学やその関連分野で、性的指向・性自認を考慮にいれた研究に取り組み、学術的な手法に基づいて性的指向・性自認にかんするデータを得る試みに共感してくれる研究者たちとプロジェクトを立ち上げ、科研費に応募し、大阪市の協力を得て、3年がかりでようやく実現しました。今回のアンケート調査は、そのプロセスの中で設計されたものです。
この調査にご協力くださった大阪市民の皆さまには、たくさんの質問項目にお答えいただき、本当にありがとうございました。4,000人以上の方が回答してくださったことを、大変ありがたく思っています。この報告書は、皆さんのご回答の全体像をお示しする意図を込めてまとめられたものです。
この調査は、実施主体が国・自治体ではなく、一般のアンケート調査と比べ、収入や貯蓄、性にかんすることなど答えにくい問いが多く含まれているため、回収率は1割を下回るかもしれないと覚悟して臨みましたが、ありがたいことに、無作為抽出の郵送調査の標準である3割に近い回収率を得ることができました。回答者の年齢や性別などの構成は、ほかの調査同様、男性より女性のほうが多い、年齢も高くなるほど多いなど、やや均一ではない側面もあります。そのため、大阪市民の意見を正確に代表しているのかという批判もありますが、類似した質問項目をたずねたほかの調査結果と比較しても、今回の結果が大きくずれてしまうこともなく、その点は安堵しています。
今後は、この調査の設計を生かし、学会報告や論文を通じて、性的指向や性自認のあり方と、健康状態、経済状態、対人関係、施策への考え方などとの関連性の分析を進めると同時に、大阪市民調査と同様の設計の調査を他の自治体や全国でも実施し、比較可能なデータを蓄積していきたいと考えています。こうした比較が可能となれば、これまで、さまざまな調査において、性別、年齢別、地域別、家族形態別などによる生活実態や意識の比較をおこなってきたのと同様に、性的指向や性自認のあり方による生活実態や意識の比較が可能となり、性的マイノリティにかんして得られている知見を補完する、説得力のあるデータの提示につながります。このアンケートの結果は、今の大阪市の状況を描写するとともに、将来はそのような目標のための重要な歴史的資料となり、次世代に引き継がれていく役割を果たしてくれるはずです。さらにこの調査が、人口推計など伝統的な研究領域に新たな発展をもたらし、多様な家族像を取り入れた人口モデルの展開に寄与し、関連分野の裾野を広げる第一歩となることを願っています。
調査主体
厚生労働省 国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部 第2室長 釜野さおり 代表
「働き方と暮らしの多様性と共生」研究チーム(日本学術振興会 科学研究費助成事業)
〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-2-3 日比谷国際ビル6F
http://www.ipss.go.jp/projects/j/SOGI/ 03-3595-2984
調査協力 大阪市